海鳴り・波小僧あれこれ

2022年9月2日

海鳴り・波小僧とは?

海鳴り・波小僧伝承は、「遠州七不思議」のひとつとして紹介されることが多く、遠州地方に住む方には、図書館などの絵本や地域の読本でご存じの場合も少なくないでしょう。

伝承とひとくちに言っても、その内容にはいろいろなヴァリエーションがあります。シンプルに「遠くまで聞こえる」とか、「方向がわからない」といった波の音の不思議な特徴のみが語られる場合もありますし、そうした特徴をもった音が天候を教えてくれるという観天望気的な内容もあります。さらにそれが不思議な生物によってもたらされるという話しも有名です。ここでよく登場するのが「波小僧」ですが、河童や海の怪物(入道)、あるいは生物ですらなく僧侶がつくった藁人形なども場合もあります。

遠州波小僧プロジェクトでは、「海鳴り・波小僧」と併記していますが、「海鳴り」とはどのようなものでしょうか。通常、私たちが波音という言葉で想像するのは、波打ち際で波頭が崩れる音だと思います。しかし、この伝承で指しているのは、「ごぉ~」や「ざぁ~」など、一定に持続する中低音域で遠くまできこえる音だと考えられます。どこまで遠くまで聞こえるかというと、「雷三里・波音七里」といわれることもあるように、七里(=約25km)くらいまで聞こえるといいます。浜松市でいえばいなさ北ICのある鎮玉地域にあたります。じっさい私たちも、付近の集落の方から「以前は聞こえていたよ」という証言をきいています。

海鳴り・波小僧が聞かれるのは夏。梅雨の時期から土用・お盆のころを経て、台風の季節に波音はひとつのピークをむかえます。そして冬へむけ、遠州灘の波音は鳴りを潜めていくといいます。

はたして、どのようなメカニズムでこうした音が発生し、またそれはどういった経路で伝わっていくのか。観天望気としての精度はどの程度であったのか。人びとはどのようにそれを認識し、伝え、物語化していったのか。いまなお興味深い「ナゾ」がいっぱい残されています。

以上、まずは概説を試みましたが、本サイトでは今後も海鳴り・波小僧の「あれこれ」を語っていきたいと思います。お付き合いのほど、どうぞよろしくお願いいたします。

※写真は引佐地区三岳から浜名湖を望む風景です。

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